ニューヨークで自転車事故にあって外科手術を受けた

Fumiaki Yoshimatsu
10 min readOct 2, 2017

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この話はニューヨークで自転車事故にあって鎖骨を折ったの続きです。

手術当日

前日午前0時以降は飲食一切禁止ということだし、朝6時には起きないとだしということで、前日はとっとと寝て金曜日の朝。6時半ごろ出発して地下鉄に乗って歩いて NYU Langone Tisch Hospital に到着。でかい。NYU すごい。NYU の病院施設だけでこんなにたくさんあるのに、NYU には他にもキャンパスがたくさんあるし、すごい。桁が違う。

教わった通りに4階の受付へ進み、8時にはなっていなかったけど受付に通されて、またしても同意書などにサインをして、$5,300をクレジットカードで払う。これ、渡米1年目とかだったらもしかして信用枠がなかったかもしれないし、そうしたらどうしてたんだろう、昨日のうちに銀行で小切手を作ってもらっていたんだろうか。

(後で見たんだけど)領収書をみると、手術の総額は$16,000を超えていた。Deductible $2,000 を引いた$ 14,000程度の CoPay 20% + $2,000(Deductibleは払わないといけないから)ということで、プラスSurchargeとかで$5,300的な値段でした。

ここで妻を待合室に置いて、診察室的なところへ通され、20分くらい待たされた後に、看護師から服を脱いで、身体を拭いて診察着に着替えて、着替えや靴をこの(NYU ロゴの)袋に入れてと指示があり、済ませる。済ませて、看護師が一連の質問(最後にものを食べたのはいつだとか、酒飲んでないかなど)をして、診察室へ妻が登場。

次に今回手術を行う医師についているresidentだという2人の医師が登場し(2人とも初めて会う人)、手術のリスク事項について説明する。とはいえ、手術の内容は普通のもので、この医師の腕もよいから大丈夫、はははっと。それと、輸血が必要になったときに輸血を受けるつもりがあるかも聞かれた。もうぜひとも輸血してくれと答えた。そして、すべての説明を受けた旨を記したところにサインをするところで、ハタと気づく。

通訳システムMartti

前日の電話のとき、この説明時に通訳を必要とするかどうか聞かれて、医学用語がわからないことが多いのでお願いしたいがいくらかかるかと聞いたら「いや、無料ですよ」と言われたので、お願いしていたのだった。それが記録にあったので、よし通訳を呼べ、と。

そして登場したのが、車輪付きで移動可能なデカい自撮り棒の先にiPadがくっついているスタイルのMarttiというもの。とはいえただのSkypeではなく、お互いのコード番号やアクセスコードやらをやりとりして初めてつながるような、患者のプライバシーやその他セキュリティに配慮した特化型システムのようだった。

日本人と思われる女性が音声越しに(人によってはビデオ通話なんだけど、日本人はほとんど音声だね、と看護師が言っていた)通訳をしてくれたのだが、結論としては僕には不要だった。というのは、医師はもちろんわかりやすい言葉で説明してくれるし、意味のわからない言葉は意味がわからないと言えばいいだけなので。手元にスマホがあれば、単語を入力したり入力してもらったりして、調べることもできるし。ただ、英語がほんとうにできない人にとっては安心だろうし、そもそも日本語だけじゃないいろんな言語に対応しているらしきシステムで、これはほんとにやっぱりニューヨークだなあと思った。英語を話せなかったために適切な医療を受けられなかったという状況を極力減らすための努力なんだなあと。システム自体は別の会社が提供しているぽいから、お金はかかっているはずなんだけど、通訳が必要という理由で医療費がさらに増えたりはしないという、通訳はluxuryではないということか。

考えてみたら、救急車に乗って最初に隊員に聞かれたのも、救急病院で最初に聞かれたのも、「Do you speak English」だった。アメリカの他の街で病院に行ったことはないので比較はできないけれども、ニューヨークが多様性にあふれる都市であることを良いことだと思っていて、それを維持するために努力をしている街なんだなあと大げさながら思った。東京オリンピックに向けた国際化の取り組みは…とか少し思う。

手術準備…

外科手術の同意を終えて、次は麻酔の同意があるはずなんだが、看護師が「手術室の機器に問題があって、ちょっとおしてるから1時間くらいかかると思う」と。1時間くらいボーっと待っていると、木曜日にオフィスで会った執刀医が登場し、「やあやあ、ちょっと機械に問題があってねえ、あと2時間くらいかかりそう。待っててくれよ。同意書はOK?OKね。よしじゃあ印をつけて、と」とかいって、患部になにやら印をつけ、手の親指にはニコちゃんマークを書いて去って行った。

この部屋にはテレビがあって、なんでも見放題だったんだけどあまり見る気もしないし、CNNをぼーっと見て(このときこの空軍学校での差別問題に関するスピーチのことが流れていた)たりして、そして寝たりして、とにかく退屈で何もない時間がすぎる。あげくに看護師が交代する時間になって、外で引き継ぎをしている様子も聞こえたり。

結局麻酔科の医師がやってきたのは、たぶん12時半くらいだったと思う。4時間以上何もせずに待っていたのだった。自分はともかく、部屋が結構寒くて同じ部屋にいた妻が風邪をひくんじゃないかと。

麻酔科の先生も麻酔の内容とリスク説明をして、同意書にサインして、と日本語のページを開き、そこで看護師が「あ、日本語のページにサインするなら、通訳してもらわないと」「あ、そうなの?じゃあ英語のページで」「いや、外科手術の同意を日本語でしてるから、これも日本語じゃないと」「あ、そうなの、じゃあMarttiか。」ということで再度Martti登場。朝とは違う日本人の方が、通訳をしてくれた。必要なかったけど、でもありがとうございます。通訳コードを入れて、同意書にサインして、完了。

手術へ

ようやく順番が回ってきた午後1時半。車椅子に乗って手術室へ。ここで妻とは別れ、一般とは完全に隔離されたエレベーターへ。車椅子を押している人が無線で「患者搬送、4階から6階」というとエレベーターが到着する。中にもエレベーター操作専門に乗ってる人がいて、その人がフロアのボタンを押す。とにかくエレベーターやボタンやその他に、患者や車椅子を押す人が一切触らない仕組み。院内感染防止ということらしい(書いてあったのをチラ見しただけ)。

手術室のフロアーは騒然としていて、「この病院、まだこんなにたくさん医師と看護師がいるの??」ってくらいたくさん人がいた。手術担当の看護師が僕を受け取って、名前や生年月日で本人確認をし、手術室へ。ドラマでおなじみの、目の前にでかいライトがあるベッドへ上がり、右手の甲に点滴の針を刺され、点滴で麻酔を入れますよー、もう1回お名前と生年月日を、とベッドの上で言わされ、もう一人の看護師が「私も担当ですよろしく」「ナイスツーミーチュー」と会話をした。部屋には10人くらいいた気がする。これなら$16,000はかかりますわそりゃ、と

ここで記憶がぷっつり。

リカバリールーム

目がさめると、ベッドの上で、手術は終わっていた。傷口はだいぶ痛くて、喉もカラカラで、考えてみたら前日の午前0時からすでに14時間以上水すら飲んでいないことに気づいた。目が覚めたことに気づいたかわいい看護師さんが、今ご家族を呼びますからね、何かほしいものは、というので、「み、みず。。。」

水をもらい、妻と会い、いったん妻はまた戻って行って、麻酔の先生とresidentの2人が様子を見に来て、手術は何の問題もなかったらしい。

お隣の患者さんが覚醒後にだいぶ咳き込んでいて、なんか大変なことぽかったんだが、僕についているかわいい看護師さんはそっちも多少ケアしつつも、えらくテキパキと「ちょっと傷口が痛くて。。。」「痛み止めを入れましょう。」「今点滴から入れたからこれはすぐ効くけどすぐ切れるので、錠剤も飲みましょう。でも錠剤を飲むには何か食べないと。クラッカー、塩味と甘いのどっちがいい?」「あー、あ?どっちでもいい。。。」「わかった」「はいクラッカー」「はいさらにクラッカー」「はい水も飲んで。クラッカーってパサつくでしょ?」「はいさらにクラッカー、今度は違う味のやつ。もう少し胃の中に何か入れないと。」「はいまたクラッカー、あ、砕けてたごめん」「はい、じゃあこの薬を飲んで」

痛み止めというものを初めて飲んだ気がするんだが、効きますねこれ。びっくりするくらい痛みがなくなった。他の感覚はあるのに。

その後もしばらくじっとして、2時間ほど経過したところで、じゃあそろそろ帰りましょうか、となった。血圧や心拍をチェックして、機器を身体から取り外して、テキパキ看護師さんが最後に顔を覗き込みながら、にっこりと笑って「最後に例のバカバカしい質問するわね。お名前と生年月日は?」無事に答えられたので、ベッドから降りて、車椅子へ移り、医師や看護師とさようならして、来た時と同じ要領でエレベーターに乗り、診察室へ。妻も戻ってきて、そこで最後にまた別の看護師と対面した。

Discharge手続き

麻酔付きの手術で日帰りする場合は、付き添いが必須であり、さらに帰っても良い状態であることを看護師が確認する必要があるらしい(というのは前日の電話で言われていた。誰が来るかもそのとき言う必要があった)。この最後の看護師さんが一番とっつきづらい人で辛かった。辛かったのはもう1つ理由があって、ベッドから降りて車椅子に移ったときに立ちくらみがあって、それは当たり前だからそのまま車椅子に乗ったんだけど、車椅子に乗っている間にどんどん貧血っぽい、頭から血の気が失せてすこし吐き気がするような状態になっていて、それを看護師に告げたら、ううーんその状態では家に帰せないが、血圧も正常だし、ちょっと休みましょう、と。んでオレンジジュースをもらい、クラッカーももらったんだけど食べられず、正味4、50分帰れなかったんだろうか。ただ座り、何度か血圧を測り、立った状態で測り、「問題ないんだけど」「やーでもさ、貧血気味なんだよね」と貧血という単語をGoogle Translateして見せても「いや、でも血圧は正常だし」と言われるだけで、いや貧血的な状態と血圧って関係なくね?と思いながら、うー、最後のこの人だけ話しづらいなあ、もう無理して帰っちゃおうかなあ、と思い始めた。

結局、トイレに行って小さい方を出し、最高ではないものの気分もだいぶ治ったので、そういうことでじゃあ帰ります、ってことで、念のため1階まで車椅子で押してもらって、病院を後にした。看護師に「どうやって帰るの?」と聞かれて「地下鉄じゃないかな」と行ったら「はあ?地下鉄?その状態で?私ならUber呼ぶけどね」と言われ、「はあ、それもいいアイデアだね」なんつって、結局病院の外に止まっていたタクシーに手を上げて、帰宅する。8時過ぎ。12時間病院にいて、$5,300というか$16,000の外科手術が完了した。

週末

その夜は、傷口がだいぶ痛くて、明け方起き出して痛み止めを飲んでまた寝たりして、土曜日もほとんど動かずぼーっとしていたが、土曜日の夜はだいぶ痛みも引いていて、日曜日もあまり何もせずにぼーっとしていたんだけど、明日は普通に出社します。

事故の相手とは手術前に一応連絡は取れていて、お金の件を少し話してあるので、$5,300のうちいくら払わせられるのか。弁護士にでも頼めば慰謝料やらなんやらでもっと取れって言うんだろうけど、どうしようかなあ。

続く

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