ニューヨークで自転車事故にあって救急車で運ばれた

Fumiaki Yoshimatsu
6 min readOct 2, 2017

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いつもの水曜日の朝。いつものように愛車にまたがり、歩行者の予測不能な動きに細心の注意を払いながらブルックリンブリッジを越え、車線のある道に出てほっと一安心し、前方に2台の自転車が並走してこちらに向かってくるのを見て、「まあ完全に車線があるところだし周囲にも余裕はあるし、あっちが避けるに決まってる」と思い込んでそのまま自分の車線を直進し、…

え?避けないの???は?なに?してんのお前?

まったく回避行動をしないでこちらの車線上で逆走を続けた1台と、隣の車線を走る2台との間をすりぬけるような感じになって、すり抜けられた!とおもった次の瞬間、こちらの車線を逆走していたライダーと接触してふっとばされ、左肩から道路に落ちた。

しばらく呆然として、それから何気なく左肩から首にかけて触ってみて、変な出っ張りがあるのに気づいて、「あ、鎖骨折れた」。自転車ロードレースを見ていておなじみになった、fracture、collarbone、という英単語が頭をめぐる。

たまたま交通警官が毎朝立っている場所で起きた事故で、警官が様子を見にきて、事情を聞き、救急車を呼んでくれた。さらにぶつかった相手もすぐにこちらに来て警官と話をして、さらに最初から「アイムソーリー」を連呼していて、あ、やっぱりアメリカ人は謝らないとかいうのもウソなんだなぁとか、もやーっと考えた。

10分くらいで救急車が到着し、警官から「84 precinct で injury report を出してあるから必要なら取りに行け」と言われ、この「precinct」がわからなくて、でもまあいいかと、救急車に乗って、包帯で左腕を曲げた状態で固定し、「あ、これ自転車レースでよく見る姿勢」とか思いながら、あー、救急車で ER か、一体いくらかかるんだろう…。

救急車から救急病院

救急車の2人はプロフェッショナルなフレンドリーさで不安感は特になかった。救急車内で住所や電話番号、身長体重なんかを聞かれた。身長体重は、フィートやポンドでは言えなかったんだけど、KgとCmの数値で大丈夫で、入力しているタブレット端末で勝手に変換されていた。

救急隊員が警官から Go をもらって、おそらく一番近いだろう NYU Langone Cobble Hill という Emergency Care 施設へ。20分くらいだったかな。救急車を降りて、歩いて処置室まで行き、そこで看護師が救急隊員と情報を(タブレット端末で)交換し、交換したはずなのに再度身長体重を聞かれ、SSN を聞かれ、言ったら変な顔をされ、「その番号変?」と聞いたら「なんかちょっと変」と。えーなんか違うのかな。

救急隊員は「feel better, man!」と言って去り(周りからいろいろ聞かれていてろくにお礼も言えなかった)、看護師が情報入力を終えたところで、着ていた服を激痛に耐えて脱ぎ、看護服を着たら医師が2人登場し、どういう状況だったのか、身体がどうなっていると思うのかを聞かれ、レントゲン撮影をしましょうとなる。この間、Wifiがあるのを発見して、会社と妻へ事故った旨を連絡。

たぶん撮影準備を待っている間、医療事務の方がタブレットを持って登場し、10箇所くらいサインする必要がある各種同意書の説明をしてくれた。他の病院の医師から紹介があったときに履歴を見せてもいいか、保険会社には見せてもいいか、とかそういうこと。あと臓器提供の意思(するしないではなく、そのどちらかの意思)を示したか、とか。それとパスポートと保険証を渡す。

同意書の説明がまだ続いている間にレントゲン技師が現れて、撮影へ。7–8枚撮影して、ああーこれはいくらになるんだろう…。

レントゲンから戻るとさっきの同意手続きの続き。そうこうしているうちに身体が冷えてきて、それから患部が急速に腫れて痛くなってきて、それを見た看護師が痛み止めを出しましょうかと言ってくれたんだけど、ここでまた「自転車レースでは最近痛み止めも問題視されていたな」とか思って「いいえ結構です。耐えます。」とか言ってびっくりされ、代わりにアイスバッグを持ってきてくれて、さらに毛布もくれた。この毛布が温めてあるんですよ。ほんわかしてホッとするんですよほんとに。

その後2人の医師の1人(すぐ目の前の席でコンピュータを見てた)に呼ばれて、レントゲン写真の説明をされ、要するに1本の骨が3つに別れてしまっていて、しかもそれぞれが微妙に重なり合ってしまっているので、手術することを「おすすめする」と。そこで思わず「えっ、他にオプションがあるんですか?」と聞いてしまったんだけど、もちろん医師は真剣な表情で「放っておいて治るのを待つってこともあるし、実際私はそれで治したんだけど、あなたのとは違って私の場合は折れた場所が山型に盛り上がったような状態だったのと、あなたはアクティブな人のようだから、腕が90度より上に上がらないというような後遺症は避けたいでしょう?それなら手術をした方がいい。」と。

そうか、あくまでも、こんな場合でも患者の意思が尊重されて、患者の意思によって医療行為が行われるのだ。こんなときでも受動的になすがままではいられないんだこの地では、と、ちょっと生きていくのが辛くなる。

「そういうわけで、すでに外科の先生に連絡をつけてあって、先生はあなたに今日中に電話してきてほしい、今日中に会って、なるべく早く手術をしたいとおっしゃっている」と説明され、After Visit Summaryというものを渡されて、「とにかくここに電話して」となって、診察などは終了。

この間に、さっき渡しておいたパスポートと保険証を使って医療事務の人がいろいろ手続きをしてくれていて、看護師からも最後の説明、とにかく先生に電話しろ、あと家でなにをするかはAfter Visit Summaryに書いてあるから、ということを聞かされ、最後にパスポートを返してもらいに事務の人のところへ行って、返してもらったら、それで終了した。

あれ?ここの料金はどこで払うの?って聞いたら、「んんー?支払いはないみたいよ。」Emergency Care の CoPay は Waive される場合があると保険の説明に書いてあるけど、そういう場合だったんだろうか。よくわからん。まだ請求は来ていない。

会社に改めて詳細を連絡し、事故現場に停めてある自転車を回収して会社に行くと言ったら仰天され、今日は来なくていいからと言われて、考えてみたら外科医にあわないといけないかもしれないしと思って、ありがたくお休みをいただき、妻に連絡して近くの地下鉄駅まで来てもらって、2人で自転車をかついで家に帰った。自転車は外見上は壊れていないように見える。地下鉄に(ラッシュ時以外なら)そのまま自転車を載せられるのがありがたい。

このとき午前11時ちょっと過ぎ。外科医訪問へ続く。

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